私たちの身体を作る「油」

 つい先日、面白い本を読んだ。

田豊文「病気が嫌なら油を変えなさい」(河出書房新社,2007年)

↓下記にリンクを貼っておきます。

 

この本いわく、私たちの身体を作っているのは「食」であり、

また、それを壊しているのも「食」であるという。

 

疑いようもなく私たち日本人はとても長生きだ。

しかし、厚生労働省の2006年の調査によれば、

日本人の約9割は病死であるという。

 

また、本書の情報を元にすれば、

現在、日本には380万人もの糖尿病患者に加え、

1,000万人程の糖尿病の予備軍がいる。

 

数十年前までは私たちの生活に無縁だった糖尿病やその他の生活習慣病

ここ数十年で私たちを取り巻く食生活はどのように、そして何が変化してきたのか?

その問いに対するヒントを与えてくれるのが本書だった。

 

*私たちの食生活は「油」を採りすぎている?

 

・基本的な油の性質は以下の通り

①動物性油脂は不溶性で、血中で固まる

②植物性油脂は溶性で、血中においてもサラサラ

 

しかし、例外もある。

それがマーガリンやショートニングなどの「水素添加」された植物性油脂だ。

これらの油脂は人工的に水素添加することで固形で、常温でも解けなくなるが、

水素添加の過程でトランス脂肪酸に変化し、体内における消化の機能を阻害する。

また、分解されても必須アミノ酸(人間の身体に必要不可欠なアミノ酸)にはならず、

有害物質に対しての抵抗力を下げる効果があるという。

 

それを聞いただけでもぞっとするが、私が知って愕然したのは以下のことだった。

つまり、こうしたトランス脂肪酸の塊であるショートニングやマーガリンは

なんと欧米諸国やその他の多くの国では使用が禁止されているか、

もしくはその使用が厳しく制限されているという。

 

諸外国の基準に照らし合わせれば、

それらの有害な食品の販売が許可されている時点でおかしいが、

近所のスーパーやコンビニで成分表を見てみるとほぼ全てのお菓子やパン類には

それらの有害物質が多く含まれていることがわかる。

 

*私たちの取るべき選択肢は?

以上のような状況なので、正直それらの有害物質を避けるのは難しいが、

全ての油が人間の健康にとって悪いわけではない。

ただ、私たち現代人が摂取している油の大半が無駄か有害なものである

ことは紛れもない事実らしい。

 

つまり、魚の背油から採れる油やシソ油、えごま油にアマニ油などオメガ3を

多く含む油の摂取量は明らかに少ないのに対し、サラダ油やショートニング

などのオメガ6を含む油の摂取量が多いという現状がある。

 

問題は、オメガ6の油を取りすぎると細胞膜が固くなり、

血中の酸素が行きわたりにくくなることだ。

 

このことが心臓病や皮膚病などの原因にもなるし、

乳児期における油の選択次第でその後の子供の神経回路すらも

決まってしまうという。(一度作られた神経回路は再建不可能)

 

筆者はこうしたオメガ3脂肪酸を含む油を積極的に取り入れ、

「マゴワヤサシイ食」なるものを3食食べることを推奨している。

 

(マ)豆、大豆など

(ゴ)ゴマやナッツ類

(ワ)ワカメ、海藻類

(ヤ)野菜類、特に緑黄色野菜

(サ)魚、特に青魚

(シ)シイタケ、きのこ類

(イ)芋類

 

以上の食事にオメガ3を豊富に含むアマニ油を加えると、

抗がん作用、血中酸素の正常な循環が期待できるという。

というのもアマニ油には脂肪の消化するリパーゼや

抗がん、抗ウイルス耐性を持つリグナンなどを含んでおり、

それを摂取するだけで多くの病気の予防が期待できるからだ。

 

なるほど、このように見てみると

伝統的な日本食がいかに完成され、

健康的な食であるのかを再認識させられる。

同時に、食の欧米化が叫ばれて久しい

アメリカ型の日本食が私たちの健康にどんな影響を及ぼしているのかも。

 

大事なのは問題を知ることではなく、

知った上で解決策を練るなり、行動をしていくことだろう。

 

*本書を読んでみて

全く、毎日食べている食事について、

自分は何も知らないんだなと驚かされました。

特にお菓子やパン類などには多く有害なトランス脂肪酸

含まれているので、甘いものを食べたい時にはそれらの

原料が含まれていないような商品を選ぶか、自分で作ろうと決心しました。

「マゴワヤサシイ食」については、すぐに食生活の変化は難しいので、

アマニ油を購入して納豆や豆腐などに加えて食べてみようと思います。

 

それでは、また次回の読書レビューにて!

 

Kazuki

 

 

 

 

 

 

 

台湾は正式な国ではない?!

*非公式な国家が存在する?!

最近職場の同僚からある言葉を聞いて衝撃を受けた。

いわく「台湾は正式な国家ではなく、未承認国家」だそうだ。

 

気になった私はAmazonで未承認国家に関する書物を探してみた。

そして出てきたのが下記の本であった。

 

未承認国家と覇権なき世界 (NHKブックス)
 

 

読んでみて驚いたことには「未承認国家」とはあこぎな商売をしている、

不法で怪しいような国家群だけではなく、台湾やイスラエルのような国際的に

認知されていて、経済的にも情勢的にも比較的安定している場所もあることだ。

 

そもそも、未承認国家とは自国の主権を主張しつつも、

国連における大多数の承認を受けられていない地域のことを指す。

現在国連によって国家として認可されているのは190か国余り。

そうした状況の中で自分たちの意思とは反して国家として認可されない

地域があるというのは一体どういうことか。

 

*なぜ未承認国家が生まれたのか?

その理由を簡単にまとめると以下の通り。

 

①冷戦後の混沌とアメリカ・ロシアの実質的な対立の継続

②「国家」の条件となる(1)民族自決(2)領土保全の原則の矛盾

③利益需給主体としての未承認国家と支援国家というが成立している現状

 

まとめるつもりが抽象的になりすぎたので順を追って説明しようと思う。

 

①については主に冷戦下における米ソ対立の延長線上の話になる。

具体的な話を挙げると、

旧ソ連圏にはアゼルバイジャン領のナゴルノ・カラバフ

グルジア領の南オセアチア、アブハジアモルドバ領の沿ドニエストルがある。

これらの国々はどれも旧ソ連圏の国々に位置し、法的な宗主国(第一親国)から

独立しようとするも国際的な承認が得られないために未承認国家となっている。

 

米が領空開放条約から離脱 旧ソ連・ジョージアめぐり対立:東京新聞 TOKYO Web

 

しかし、ここで疑問になるのは

「国際的な承認も無く、宗主国と係争状態になり得るのか」といったことだろう。

 

もちろん、当該地域による軍事力や経済力では宗主国には勝ちえない。

そこには様々な利害関係が絡みながらも存在する未承認国家の苦悩が隠されている。

 

未承認国家が未承認国家たらしめているもの。

それはパトロンとなる「後援国家」の存在である。

 

上記の地域においてはロシアが、

台湾やイスラエルにおいてはアメリカがその役割を担っている。

 

しかし、その二大大国の軍事力・経済力を持ってしても

国家として成立させることが出来ないような地域とは一体どんな地域なのか。

そこにはどうやら高度な政治的な判断が働いているようだ。

いわく、彼らは利用され、また一方では利用している関係にある。

このことは③についてで詳しく書いていこうと思う。

 

②そもそも国家とは何であろうか。

社会学者のマックス・ウェーバーは以下のように述べている。

「国家とは暴力手段(警察・治安維持部隊etc)を保有し、専門性の高い人々によって

 統治される政治機構である。」

つまり、軍事力と専門性の自治政府が国家の絶対条件であるという。

 

だから、彼の定義に沿えば周辺国と比較して規模の小さく、

国際的な立場が低い未承認国家群が国家になり得るはずが無いだろう。

 

しかし、現実はもっと複雑だ。

話は17世紀にヨーロッパで締結されたウェスト・ファーレン条約に遡る。

この条約によって国際的に「国家」が定義づけられた。

その定義とは(1)民族自決と(2)領土保全であった。

しかし、以上の定義は明らかに矛盾しているだろう。

未承認国家の問題に戻って考えてみれば一目瞭然だ。

 

もし、ある地域においてある特定の民族が①民族自決を唱え、

その国からの独立を正当化しようとしたとする。

しかし、宗主国から言わせてみればそれは②領土保全の観点から

到底容認できるものではないだろう。

結果として両者は紛争状態になり、両者ともに消耗してしまうかもしれない。

なぜなら国際的な上記の二点の原則に照らし合わせれば両者とも正しいから。

それではなぜこうした国際秩序が維持されているのかと言えば、

帝国時代の遺産の使いまわしという他無いだろう。

 

つまり、植民地開拓時代における「国家」とはとどのつまり「先進諸国」であり、

彼らが見ていたのは「外」に対しての拡大と他の列強諸国との競争だった。

その時代においては①と②は何ら相反する原理・原則では無かった。

自国民が望んだ侵略戦争と戦勝の報酬としての領土の保全を正当化してくれる。

 

しかし、時は進み、現代になってからは「国民」の問題から「民族」の問題となった。

こうした問題が顕在化するのは往々にして領土が広く、住んでいる民族が多い、

植民地時代の帝国や現代におけるソ連アメリカなどの超大国だ。

特にソ連に関してがその連邦制が1991年に崩壊してから各共和国単位で独立運動

が広まっていった結果、民族ごとの(1)自主独立が顕著に見られる。

 

こうした国際的な枠組みと現代社会の不和が未承認国家のような

不安定で不明確な地域の誕生を助長しているのは間違いないだろう。

 

未承認国家がなぜ冷戦後に誕生していったのか、

その理由が②でおおよその説明は出来たと思うので、

③ではなぜ未承認国家が存続できるほどの強い力を持つことが出来る

のかを説明していこうと思う。

 

③とどのつまり未承認国家が存在しているのは、

当該地域の自治政府と後援国家に利益があるからである。

 

例えば、旧ソ連圏の未承認国家は、

非合法な人・物・金の密輸ルートであり、

危険時の保管庫替わりとして利用されているらしい。

こうした闇ルートとしての未承認国家の利用は、

関係する国家や企業に莫大な利益をもたらす。

 

また、後援国家による経済・軍事力の支援は

未承認国家の国際的立場をアピールすることができ、

軍隊駐留に伴うインフラ整備や各種の需要の喚起は

地域経済を潤すといった側面もある。

 

こうした戦略はアメリカ駐留基地にも見られ、

アメリカとソ連、そしてヨーロッパや中国といった国々が

軍事力・経済力による地域の実質的な支配戦略展開しており、

未承認国家の問題はそうした政治的戦略の一部だと言える。

 

長くなってしまったが、未承認国家の全てが傀儡国家な訳では無い。

台湾やイスラエル、またコソヴォのように多くの国から承認を受け、

経済的・政治的に影響力を持っている国もある。

 

未承認国家の問題は国家間、ひいては利益集団同士の対立とは

切っても切れないような関係性にある。

 

最も大事なことは市民の民主的で自由な国家に対する願望が、

本当に彼らの実現したい形で実現されることだ。

国家の垣根も無くし、地球国、地球統一政府が実現すれば

国家間のいざこざも無くなり、平和な世界になるのだろうか?

それとも、人はやはり何かにつけて争うことになるのだろうか?

 

この問題に解は無いのだが、

最近の世界情勢を見ていると後者が可能性としては高いのかもしれない。

 

kazu